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  3. 慣らし運転と点検で対話する儀式

レストアが完了した、あるいは長い冬眠から目覚めさせた愛車。
キーを回し、セルボタン、あるいはキックペダルに手を掛ける瞬間は、何度経験しても緊張と期待が入り混じります。

しかし、いきなりアクセルを全開にするのは野暮というもの。
機械との再会には、しかるべき手順と儀式が必要です。

はやる気持ちを抑え、愛車の声に耳を傾ける時間こそが、オーナーだけに許された特権です。

エンジン始動は慎重に

長期間エンジンをかけていない場合、シリンダー内のオイル膜が落ちきっているドライスタートのリスクがあります。

この状態でいきなり火を入れると、ピストンリングやシリンダー壁、カムシャフトに致命的な傷をつける恐れがあります。

まずはプラグを抜いて(点火させずに)何度かクランキングさせ、オイルポンプを回して各部にオイルを行き渡らせましょう。

無事にエンジンが掛かったら、すぐに走り出さず、アイドリングの音に全神経を集中させてください。

カチカチというタペット音、排気漏れの音、あるいは金属が擦れるような異音はないか。
水温計や油圧計の針は正常な位置を示しているか。

暖機運転は、単にエンジンを温めるだけでなく、機械の調子を聴診するための大切な時間です。
排気ガスの色や匂いからも、燃焼状態の良し悪しを感じ取れるはずです。

五感を研ぎ澄ます試運転。違和感を見逃さない

走り出しは、まるでリハビリのように優しく。
急加速、急ブレーキは厳禁です。

慣らし運転が必要なのは新車だけではありません。
組み直したパーツ同士が馴染むまで、あるいは久しぶりに動くサスペンションやベアリングが目を覚ますまで、対話するように走らせます。

この時、頼りになるのはあなたの五感です。
ステアリングから伝わる微細な振動、焦げ臭い匂い、ブレーキレバーのタッチ、スロットルのツキ。

数値化できない・なんとなく変・いつもより重いという直感は、大抵の場合当たっています。

違和感を感じたらすぐに安全な場所に停止し、確認する。
その慎重さが、焼き付きなどの致命的なトラブルを防ぎます。

定期的な点検が寿命を延ばす

旧車は壊れるとよく言われますが、その原因の多くはメンテナンス不足か、逆に乗らなさすぎることによる劣化です。

機械は動いてこそ調子を維持できるもの。
長期間放置すると、キャブレター内のガソリンが腐敗してジェットを詰まらせたり、オイルシールが乾燥して硬化し、オイル漏れの原因になったりします。

月に一度は火を入れ、近所を一周するだけでも、各部の固着や腐食を防ぐ立派なメンテナンスになります。
もちろん、油脂類の定期交換は基本中の基本です。

乗っていなくてもオイルは酸化し、ブレーキフルードは湿気を吸います。
距離を走っていないからといって交換をサボらず、半年や一年といった期間を決めてリフレッシュしてあげましょう。

愛車との対話は、走らせることから始まります。
定期的に動かし、小さな変化に気づいてあげること。

それが、愛車を不動車にせず、いつまでも現役で走らせるための唯一の方法です。
次の週末は、少し早起きして、愛車と語らう朝駆けに出かけてみてはいかがでしょうか。

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